【本紹介】「どうしてそんなことができないの?」と思ってしまう方へ

私が読んで面白かった本を紹介する記事。今日は、『ケーキの切れない非行少年たち』という本を紹介します。

漫画化もされている有名な書籍で、思わず手に取ってしまいたくなるタイトルです。

みなさんもつい「どうしてそんなことができないのだろうか」と、学校や自分の子供に対して思ってしまうことがあるのではないでしょうか。そんな自分の思考に対して、一度ゆっくりと立ち止まって考える契機となる本です。

こんな人におすすめ
  • 教育関係のお仕事をしている人
  • 自分の子供の学習能力に不安がある人
  • 非行化・少年犯罪に関心のある人
目次

概要

著者は、多くの子供たちと向き合う中で、非行少年に対する主流な治療方法の認知行動療法(思考の歪みを修正して、適切な行為・思考・感情を増やして、対人スキルの向上を図る治療方法)は、そもそも認知機能に問題がある場合、効果ははっきりと証明されないことに気付きます。反省以前の問題であり、きちんとした支援が必要な子供がたくさんいるのです。

そんな子供たちの実態と、具体的な支援方法が記載されてあります。

教育の大前提を考えさせられる本です。

著者紹介

著者は宮口幸治氏。精神科病院や少年院で勤務してきた精神科医。本書では主に著者の医療少年院での勤務経験が元になっている。

現在は、大学教授としても活動されている方です。

この本を読むメリット

”教育を受ける土台”の重要性がわかる

教育を受ける土台として、全ての行動の基本である認知機能が必要です。

認知機能とは、記憶、知覚、言語理解といった知的機能のこと。五感を通して情報を得て、その情報をもとに計画を立て、実行していくのに必要な能力。

しかし、認知機能が弱いと、そもそも五感を通して入ってくる情報を間違って捉えたり、また間違って整理したりすれば、こちら側の教育支援が正しい方向には進まないとしています。

認知機能が弱いため、矯正教育を行っても理解ができません。被害者の手記を読ませる際には、まず文字をちゃんと読ませる段階から。もし読めたとしても被害者が何を言っているのか理解できない、もしくは全く異なった理解をしている。

これは決して矯正教育だけの問題ではなく、学校教育でも同じことが言えます。反省させる以前に、理解できる力があるのか、今後どうしたらいいのかを考える力があるのか、を確かめる必要があります。


誠に勝手ながら、この認知機能は全ての人が生まれながらにして持っているものだと思っていました。しかし、小学校の頃におそらく認知機能が弱いであろうクラスメイトがいたことを思い出しました。「なんでそんなこともできないのだろう」と、突き放した思考を持っていた自分に悲しくなります。

反省以前の子供たちがいるということを知ることで、周囲への接し方も変わってくると思います。「どうしてできないの!」という前に、この件を思い出す必要があるかもしれません。

気付かれない子供たちに気付ける

軽度な知的障害を持ったひとたちは、普段生活している限りでは健常者との区別がつきません。違いが出るのは、何か困ったことが起きたときです。そのため、なんだか理解できない人、厄介な人たちという認識になってしまいます。

軽度の知的障害者は公的に障害を持っていることにはならず適切な支援がされないまま、ただただ生きづらさを抱えていることが多いわけです。

普段何気なく生活しているように思える人たちの中にも、診断が下りることなく苦しい思いを抱えている人がいます。

この本を読んでから、そういう人たちへの想像力が自分には全くなかったことに気付かされました。

本来、障害者は支援が必要な存在です。しかし、上記のように気付かれず、適切な支援が受けられず、傷つけられ、被害者になるだけでなく、加害者になってしまう現実があります。負の連鎖を止めるためにも、一人一人の意識が大切だと考えさせられる本です。

具体的な支援方法がわかる

この本では、認知機能向上への支援としてコグトレ(認知機能強化トレーニング)を紹介しています。コグトレは、認知機能を構成する5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)に対応する「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」の5つのトレーニングからなっています。

コグトレは間違い探しやパズルのようなもので、ゲーム感覚で楽しみながら取り組むことができます。学習の土台になっている認知機能を学習と感じずに向上させることができる特徴があるのです。

さらに、コグトレはお金がかからず、5分あればできるので、通常の学校教育でも取り入れやすいのが特徴です。

コグトレの詳細は割愛しますが、気になる方は本書を読んでみてください。

まとめ

本書のタイトルにもある、ケーキを3等分に切るところ。非行少年たちはいきなり真っ二つにします。「いきなり真っ二つにしたら、3等分は無理じゃん!ベンツみたいな形にしないと!」というのは完全にこちら側の、相手のことを見ていない思考であることが分かりました。

簡単な計算ができなかったり、黒板が写せないといったことができない人たちがいる。

この事実を知っているか知らないかで救われる人がいます。

自分の実生活の中にも、もしかしたらあの人もそういう苦悩を抱えている人かもしれない、と思い浮かぶ人がいました。

新たな発見を与えてくれる一冊。気になる方はぜひ読んでみてください!

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