【エーリッヒ・フロム】愛は技術だ!『愛するということ』を紹介

本紹介の記事。今回はエーリッヒ・フロムの『愛するということ』を紹介します。

1956年に発売されて以来、世界的ベストセラーになっている一冊。

「愛」についてここまで掘り下げている本を他に見たことがありません。

多くの人が悩みながらも、そのことについて学ぼうとはあまり思わないであろう「愛」。ここで一度立ち止まり、本質的な「愛」について学ぶいい機会となる一冊です。

こんな人におすすめ
  • 「愛」について体系的に学びたい人
  • 子供との接し方に迷っている人
  • 愛する技術力を向上させたい人
目次

概要

原題は『愛の技術』(The Art of Loving)であり、1956年に発売され本です。

この本は決して、恋愛に関するテクニックがまとめらている本でもなければ、ノウハウ本でもありません。

「愛」というものに関して、理論的に体系立てて解説しています。

本書では一貫して、愛は技術であり、愛されることよりも愛することの重要性を説いています。

「どう愛されるか」については考えても、「どう愛すか」について考えたことのある人はいないのではないでしょうか。

「愛されキャラ」「モテテク」などの話はあっても、「愛」の本質的なことを書いた本は見られません。

60年以上前の本ではあるが、現代でもまだまだ通用する本。いや、現代だからこそ読むべき本かもしれません。

著者紹介

著者はエーリッヒ・フロム。社会学者、心理学者、哲学者です。

1900年にドイツでユダヤ人家庭に生まれ、1933年にアメリカに移り住みます(ちなみにドイツでナチス政権が誕生したのも1933年)。

事実上の処女作である『自由からの逃走』では、ファシズムについて記されており、今でも有名な本です。

この本を読むべき理由

愛は技術であり、学ぶべきものであると認識できる

  • 愛の問題は、愛される能力ではなく、愛する能力の問題である
  • 愛の問題は、対象の問題ではなく、愛する能力の問題である
  • 愛(恋)は落ちるものではなく、技術であり知力と努力が必要である

本書を開くといきなり上記の記載があります。もうこれだけで衝撃的です。

私も、愛される(モテる)ことを求め、「愛」において重要なのは、愛する相手を見つけることだと思っていました。しかも運命的に惹かれあって(笑)。

私の今までの「愛」に対する認識がたった数ページで覆されました。

さらにフロムは、富、権力、名声を得るためにはエネルギーが費やされるのに、究極かつほんものの欲求である「愛」について語られることがないのを嘆いています。

「愛」ほど、多くの人が求め、失敗して、悩んでいるものはないというのに。

この本を読むことで、「愛」についても、他のありとあらゆるものと同じように、失敗を克服するためにその意味を学ぶ必要があり、愛は技術であることを知れる一冊になっています。

子供への愛情の注ぎ方を学べる

本書で最も多くのページが費やされているのは、愛の理論についてです。

ここでは、孤独を感じないこと、孤立感を克服することが不安や恐怖を取り除くとし、いつの時代、社会でも孤立を克服するか、他者との一体感を得るかということに立ち向かっているとしています。

人間同士の一体感を得るためには「成熟した愛」にあります。

愛は人間の中にある能動的な力であり、孤独感・孤立感を克服します。

そして、愛は与えるものです。自分の中に息づいている、喜び、興味を与える。見返りを求めたり、苦痛を伴うことではなく、与えることこそが喜びにつながります。

愛する(与えることを喜びと感じる)ためには、性格が生産的な段階に達していなければならないともしています。



前置きが長くなりましたが、個人的に印象に残っているのは、親子関係での「愛」について。

母親の愛と父親の愛で、以下のような違いがあるとしています。

母親の愛
  • 母親の愛は無条件
  • 母親が自分の子供を愛するのは、それが自分の子供であるという理由のみであり、そこに何か特定の条件が必要でもなければ、母親の期待に応えているわけでもない
  • 母親の愛は自然や大地を表す
父親の愛
  • 父親の愛は条件付き
  • 私有財産制のもと自分の財産を子供に相続させるために、その後継者となり得る子供にする必要がある
  • 現代社会を生き抜く術を教える
  • 父親の愛は規律や秩序の世界を表す

母親の愛によって、子供は自分の生命力を信じるようになり、父親の愛によって責任や規律といったことを学び子供自身のものにしていく。それが理想形であるとしています。

私は子供がいないのでわかりませんが、子育てにはそういった面があるという認識を持つだけでも変わるのではないでしょうか。

子供への「愛」に関する話として、自分の幼少期を振り返るいい機会にもなりました。

愛の技術の習得方法を学べる

フロムはまず最初に、愛の技術に限らず、すべての技術を習得するうえで大切なこととして、以下の4つを挙げています。

  1. 規律
  2. 集中力
  3. 忍耐
  4. 技術の習得に最高の関心を寄せること

フロムは、すべての技術を習得する共通の大切なことを説明したあとで、愛の技術を習得するうえで大切なことを述べています。

客観性と理性と謙虚さ

愛を達成するためには、自分の内側にあるものだけを現実として認識するのではなく、ありのままに事物を見る客観性が求められます。

その客観的に考える能力が理性です。

さらに、その理性の基盤となるのが謙虚さです。

自分の無力さを感じ、謙虚さを身に付けた時にはじめて、理性を働かすことができ、客観的に物事を見れるようになります。

人を愛するためには、自分が相手に対して持っているイメージと、他人のありのままの姿とを明確に区別し、あらゆる場面で客観性が保たれることを必要とします。

「信じる」こと

ここらへんの話はアドラー心理学の『幸せになる勇気』でも出てきた話です。

他人を「信じる」ことは、その人の人格や愛を信頼し、不変のものと確信することであり、さらに他人の可能性を「信じる」ことでもあります。

しかし、何があっても自分の信念を曲げずにいること勇気がいることであり、相当な覚悟が必要です。

愛することは、まず自分から行動を起こすことであり、自分が愛せば、相手にも愛が生まれるだろうという希望に自分をゆだねることです。そのためには、やはり信念が大事であり、わずかな信念しか持っていない人はわずかにしか人を愛すことはできないとしています。

他人を信じることと同じくらい大切なのが、自分自身をも信じること。

自分の他人に対する愛は、信頼できるものであり、その愛は他人の心に愛を生むと信じられるかどうか。

すこてん

たしかにその通りですね。自分自身すら信じられない人が他人を信じられるとは思えないですし、自分自身すら信じていない人に信じてもらいたくもないですよね。


精神的に自立した人でなければ、他人を愛することは難しい…。耳が痛い話でもありますが、アドラー心理学にも通ずる部分でもあり、非常に面白いところでした。

まとめ

愛されることが重要だと思っていた自分に、自ら能動的に愛することが重要であることを教えてくれた一冊。そして、「愛」に対してここまで深く理論立てて解説している本はないと思います。

資本主義社会で、生産性や時間効率が求められる中、今一度「愛」について深く考えることが最重要だと思い知らせてくれます。

発売から60年以上経った今でも多くの人に読まれている理由が分かります。

やはり人間どこかで「愛」を求めているし、生産性だとか効率性の及ばない世界を見たいのではないでしょうか。私もそんな一人です。

世界が不安定な状況にある今こそ読むべきであろう一冊。ぜひ手に取ってみてください!

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